河川技術に関する論文集,第６巻,2000年6月ウグイの魚群行動特性に関する実験的研究ANEXPERIMENTALSTUDYONEVALUATIONOFFISHSCHOOLINGBEHAVIORPROPERTIES石川雅朗1MasaakiISHIKAWA1正会員工修木更津高専・助教授環境都市工学科（〒292-0041木更津市清見台東2-11-1）Inthispaperwedescribeanexperimentalstudyondynamicsoffishschoolingbehaviors.Thereareveryfewpaperaboutquantitativeandpracticalinformationoffishschoolbehaviorproperties.Inordertoobtaininformationofdynamicalfishschoolbehaviors,experimentswithJapanesedaceTribolodonhakonensiswerecarriedout.ThebehaviorsofJapanesedaceinbothofstaticanddynamicwaterareawererecordedusingavideocamera,whichwasfixedonaceilingboardandcoveredthewholewaterarea.Atintervalsonesecond,imageswerecapturedfromvideotape.Coordinatesdataofeachfishheadpositionwasdigitizedfromimagedata.Thisconfirmsthataminimumdistancebetweenindividualfishisequaltoabout0.03m.KeyWords:Fishschoolingbehavior,Japanesedace,fishschoolradius,evaluationindexIndividualbasedmodel１．はじめに魚類生息環境の保全に配慮した河川計画を適正に進めるためには，その計画で盛り込む工夫がどのような効果をもたらすかをあらかじめ予測する必要がある．そのような評価を行うためのひとつのツールとして欧米では正常流量漸増法(IFIM)が広く用いられている1)．我国においても正常流量漸増法を適用するための基礎研究が行われ2～3)，いくつかの河川計画では事業レベルで魚類生息環境の事前評価が試みられている．正常流量漸増法の主要モジュールのひとつである物理的生息場シミュレーションPHABSIMでは，魚類生息場となりうるポテンシャルWUAが算定されるが魚類の現存量とは無関係である．①淵の創出，②魚巣ブロック設置，③洪水時における避難場の設置など，魚類の動きが大きく関与する超マイクロ生息場における評価では予測精度が低下することが考えられる．このようなPHABSIMの欠点を補う方法として，個体ベースモデル(IndividualBasedModel,IBM)といった魚群行動モデルの生息環境評価手法としての適用が考えられる4～8）．魚１尾１尾に着目して，設置した避難場等に魚群がどのようなアプローチで進入し，そこにどのくらい滞在するのか予測計算を行うのである．魚類の個体ベースモデルを構築するためには，個体(魚)の基本行動規則として，個体が相互に引きあう距離や反発する間隔などの各種パラメータを設定する必要がある．モデルの同定を行うためには動的な魚群行動特性を定量的に把握する必要がある．本研究はウグイTribolodonhakonensisを供試魚とした室内魚群行動観察実験を行い，①魚群半径，②個体間隔，③魚群重心移動速度の３つの評価指標を定め，それらの時間的な変動に対しスペクトル解析を適用し，魚群行動特性を定量的に把握することを目的として実施したものである．魚群行動観察実験２．(1)実験装置図-1に観察実験水路の概要を示す．静水状態の実-101-論文験は勾配が水平な実験用開水路の一部を魚止めネットで仕切ビデオカメラモニタービデオデッキ魚止めネット魚止めネット止水板可動堰制水槽制水板制水槽制水槽制水板魚止めネット魚止めネット観察水域制水槽3600180017002900600150800(800×1800）止水板可動堰四角堰四角堰平面図側面図1700〔単位：mm〕図－2観察水域の形状遮水ユニットの配置をかえて観察水域の形状は５ケースとした．｢３．魚道｣は観察水域にネック部を設けたもので狭窄部に流速を減じるプレート等は設置していない．｢５．急拡｣は下流部領域外にもユニットを配置して流れが逆流する部分が生じさせ，複雑な流速分布となるようにした．り，その0.8m×1.8mの矩形水域を観察水域として，ここに供試魚を放流し魚群行動を観察した．水路の側壁はアクリル板で透明なため，外側から黒色に着色したベニヤ板を張りつけて人が水路に近づく影響を軽減させた．下流端の可動堰の部分には止水板を設け，観察水...